Research shelf 03
問いから離れた時間が、答えを連れてくる。117の研究を集めると
「一度離れて、あとで戻る」は本当に効くのか。百年ほど前(Wallas, 1926)から続く疑問に、117の実験・3,606人分のデータをまとめて答えた研究。効果は、ある。小さく、しかし確かに。とくに「新しい発想」が要る問いで。
研究の中身
ランカスター大学のシオとオーメロッドは、「インキュベーション(孵化)」——問題に取り組んだあと、いったん離れてから戻ると解けやすくなる現象——を扱った29の論文、117の独立した研究を集めて分析した。
全体の効果量は d=0.29(小〜中)。117のうち85で効果は正の方向だった。課題の種類で見ると、創造的(発散的)な課題で 0.29、視覚的な洞察課題で 0.26、言語的な洞察課題で 0.22。統計的には、創造課題のほうが洞察課題より効果が大きかった。
離れている間に何をするかでも数字は変わる。下位集団ごとの平均は、軽い作業(低負荷、22研究)0.52、休息(16研究)0.46、重い作業(高負荷、76研究)0.24。ただし著者が統計的に確かめたのは「高負荷だと効果は小さくなる」までで、低負荷が休息を上回ったのは言語的な洞察課題に限った分析だった。著者は「言語問題を解くとき、低負荷の作業が最も大きな効果を与えた」と書いている。最初に問題に取り組む時間が長いほど効果が大きい傾向もあった(創造課題で r=.60)。
汀ではこう使っている
汀は、三晩戻ってきた問いを夜には決めさせない。昼に、これまでの朝の一行を並べて返す。「取り組む → 離れる → 戻る」を、夜と朝と昼で作っている。そして離れている間、あなたは眠っている。負荷はもっとも低い。
限界
効果は小さい(d=0.29)。創造課題の研究は14本しかなく、著者も少なさを明記している。実験の多くは数分〜数十分の離脱で、「三晩」を直接調べた研究ではない。研究間のばらつきは大きい。
出典
- Sio, U. N., & Ormerod, T. C. (2009). Does incubation enhance problem solving? A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 135(1), 94–120. https://doi.org/10.1037/a0014212
研究の紹介であって、あなたに同じことが起きるとは限りません。汀は医療ではありません。効果を約束しません。
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