Research shelf 06

書くことは、抱えていることを軽くする。四十年つづく実験のはじまり

1983年11月、46人の大学生が四晩つづけて15分ずつ書いた。半年後、「つらかった出来事を、事実と気持ちの両方から書いた」学生だけ、保健センターに行く回数が増えなかった。

実験の中身

ペネベーカーとビールの実験。健康な大学生46人を四つに分け、4夜連続、毎回15分書いた。(1) 些細な話題(対照)、(2) つらかった出来事の「気持ち」だけ、(3) 「事実」だけ、(4) 事実と気持ちの両方。毎回、前後に血圧・心拍・気分を測った。翌年5月まで、およそ半年、学生保健センターの受診記録を追った。

事実と気持ちの両方を書いた群だけ、受診が増えなかった。ほかの群は増えた。ただし統計的には p=.055 で、慣例の基準(.05)にわずかに届いていない。書いた直後は、両方を書いた群のほうが血圧が上がり、気分も沈んだ。書くことは、その場では楽ではない。

その後

この実験は「表現的筆記(expressive writing)」研究の出発点になり、以後40年、世界中で追試された。146の無作為化研究を集めたメタ分析(Frattaroli 2006)では、効果はある(平均 r=.075)が小さい、というのが今の見方だ。それでも「書き出すことは、抱え続けるより軽い」という方向は、おおむね一貫している。

汀ではこう使っている

汀の一行は「置いていく」ためのもの。振り返らせない。書いた直後に読み返させない。この実験が示した「書くのはその場では楽ではないが、あとで軽くなる」を、汀は「夜に書き、朝まで見ない」という形にした。

限界

46人、大学生、著者自身が「予備的」と明記。p=.055。半年の追跡は自己申告を含む。汀の一行(数十字)は、15分の筆記と同じではない。この実験は「一行書けば健康になる」とは言っていない。

出典

研究の紹介であって、あなたに同じことが起きるとは限りません。汀は医療ではありません。効果を約束しません。

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